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ねじの役割とは?小さくても責任重大!

ねじは私たちの生活においてさまざまな所で実に多く使われており、工作機械においても数百か所に使われています。表面上は目立たないものですが、ひとつひとつが重要な役割と責任を持っています。

1.ねじの定義

「ねじ」というと、パっとこのようなイメージをすることが多いのではないかと思います。

定義としてはねじは円筒・円錐に螺旋状の溝を切ったものとされており、外径だけでなく内径を溝切りしたものもねじとなります。

外径を溝切りしたねじは「おねじ」または「ボルト」
内側に溝切りしたねじは「めねじ」または「ナット」と呼ばれます。

おねじ・めねじとボルト・ナットは同じ意味で使われているわけではありませんが、その違いははっきりと決められていません。一般的にボルトナットはねじの頭や駆動部(頭に彫られている穴)が六角など角ばったもので、サイズが大きめのものを指すことが多くあります。めねじやナットを必要としない、小さいサイズの先端が尖ったタイプのねじはビスと呼ばれます。

また、ねじは金属だけでなくプラスチック、ガラス、木などでも加工されており、ペットボトルのキャップと飲み口の部分もそれにあたります。

2.ねじの種類と表記

ねじは形状や大きさなどによって表記が規格で決められています。

頭に付くLやPは省略されてることもあります。また、呼び径によって標準とされるピッチや山数などは決められているので、標準であればこれも省略されることがあります。

ピッチはねじの山の頂点から次の山の頂点までの距離で、数字が小さいほど締結力が上がりますが、締め回す回数が多くなるので作業効率は落ちます。また、山が薄く狭くなるためつぶれやすい・目詰まりしやすいということも起こります。

ねじの多くは時計回りに締める右ねじですが、状況に応じて反時計回りに締める左ねじが使われることもあります。この場合は先頭にLHが付きます。右ねじはRHですが、省略することがほとんどです。

3.ねじの役割

ねじにはさまざまな役割や用途があります。

物と物を締結させる

2つあるいはそれ以上のものを締結して動かないようにし、必要に応じて取り外すことも出来ます。

物を持ち上げるための補助具

大きな物をクレーンで持ち上げる際、物を安定した状態で吊れる箇所がない時や傷つけたくない時などに、フックやロープをひっかけるためのアイボルトと呼ばれるものを使って吊る方法があります。この場合はあらかじめ吊りたい物にねじ切り加工をしておく必要があります。

小さな力から大きな力を生み出す

車体などを持ち上げるためのジャッキ、物を押しつぶすためのスクリュープレス機などがそうで、どちらも人の力だけでは容易に出来ないことをねじの機構を利用し、小さな力から大きな力を生み出しています。

距離、力、量などの調節

例えば距離はマイクロメータ、力は万力、量は水道の蛇口などが挙げられます。どれも単純なONOFFだけでなく、加減を微調節できるのが特徴です。工作機械でもボールねじと呼ばれる部品があり、これもねじの機構を利用して位置決めと呼ばれる精細な動きを行っています。

4.ねじのゆるみ対策

一般的なねじを普通に回し締め付けただけでは、経年による材質の変化や使用上の衝撃・振動などで少しずつゆるんで外れてしまうことがあります。それは単なる故障や破損だけでなく大きな事故にもつながりかねないため、規模が大きなものや重要な部品に使われる場合は適切な対策を講じる必要があります。

適切な力加減で締める

ゆるまないようにと必要以上に締めすぎると逆に破損の原因になり、外したい時にゆるまずねじの頭をダメにしてしまうこともあります。対策としてトルクレンチが多く利用され、一定のトルク(ねじる力)をかけることが出来るものとトルクを数値で可視化できるものがあります。

座金

ワッシャーとも呼ばれ、ねじと物の間に挟んで使い、接地面積を大きくすることで安定させゆるみにくくする仕組みです。薄いドーナツ状の平座金やばね座金など様々な形があります。

ダブルナット

ナットを2つ使い、それぞれ逆方向に締めることでゆるみにくくする仕組みです。この時二つのナットの厚みは同じであるか、上のナットが下のナットよりも厚くなければ効果がありません。

左ねじ

締め付けるものが回転する力を受ける場合、その力の向きによっては左ねじを使います。ファンなどに対し用いられる対策です。

その他の特殊なねじ

ホーローセット(いもねじ、止めねじ):頭がなく、干渉をうけないのでゆるみにくい。
いたずら防止ねじ、ロックナット:一般的な工具ではゆるめたり締めたりすることが出来ない。
など、他にもさまざまなものがあります。

5.まとめ

ねじは使い方を誤れば大きな事故につながり、現代でも時たまニュースなどで目にすることがあります。事故にはさまざまな原因があり、ねじ自体の問題というよりはねじの耐用年数を超えていたもの、保守点検が適切でなかったもの、設計上に問題があったものなど、ほとんどがヒューマンエラーとされています。

ねじはものづくりをする上で欠かせない部品であり、適切に理解して使用し、使用後のことも考慮する必要があります。

ねじ切り加工プログラムについてはこちらの記事で書かれています。