公差とは?ものづくりに必要な “許容範囲” !

1.公差とは

公差とは、目標の値からズレていても許容とする値の範囲のことです。

例えば長さが100mmの棒材を80.00mmにカットしてほしいと依頼を受け、出来上がったものをノギスで測定すると80.00mmだったとします。しかし、測定というのはさまざまな影響をうけたり測定器自身に多少の誤差を持っているものなので、実寸が本当に80.00mmだと証明することはできません。これを “測定の不確かさ” といいます。

また、この指定だと79.95mmや80.10mmといった程度のズレはOKかNGかわかりません。80.00mmを作らないといけないのと80.00mm±0.1を作らないといけないのとでは、作業の難易度が大きく変わります。

測定の不確かさを考慮したり要求される精度の範囲を明確にするため、図面ではすべての寸法には公差が含まれており、許容されるズレがわかるようになっています。

2.さまざまな公差

一般公差

公差の中でも、特に範囲の指定がないものは一般公差といいます。(普通公差とも言います)

指定がないと言っても、最低限この範囲には収めるようにという公差がJISによって決められています。80mmの指定なのに、80.99mmなどほぼ81mmのような品質の悪いものが来ては困ります。

(引用、参考:日本産業規格 JIS B 0405 普通公差-第1部:個々に公差の指示がない長さ寸法及び角度寸法に対する公差)

一般公差
一般公差の図面表記
一般公差は記述が省略されているが、実際には公差が決められている。

一般公差というものがあるおかげで、図面を作る設計者はさほど精度を必要としない部分の寸法に関しては公差を書かなくてもよいという便利さがあります。また、公差は長さだけでなく角度においても取り決められています。

寸法公差

一般公差に対し、公差範囲が指定されているものは寸法公差といいます。(指示公差、サイズ公差とも言います)例えば下図のように表記されます。

寸法公差の図面表記

はめ合い公差

軸状の部品と穴のある部品をはめ合わせて使うような場合には、はめ合い公差が使われます。

はめ合い公差ではJIS規格によってアルファベットと数字で公差域を表記することができ、穴は大文字(例:H7)、軸は小文字(例:h6)を使用します。φ50 H6 とだけ書いてあることもあればφ50(0 ~ +0.019)と書いてあることもありますが、どちらも同じ意味です。

また、はめ合いは用途に応じて摺動してほしいものもあればそうでないものもあり、すきまばめ・中間ばめ・しまりばめといった種類があります。

はめ合い公差のイメージ

 すきまばめ : 摺動するはめ合い。
 中間ばめ  : フィットした状態のはめ合い。木づちなどで叩くと外れる。
 しまりばめ : 機械など強い力で圧入するはめ合い。基本的に外れない。

すきまばめの中でも、容易に摺動するのかぎりぎり摺動するくらいがよいのか必要なすきま加減はそれぞれなので、設計者は適切とされる公差域を組み合わせて選んでいることになります。

下記は一例です。(寸法、線は省略しています)

はめ合い公差の図面表記

幾何公差

長さや大きさだけでは表現できない、歪みやズレなどの形状や位置関係における公差を幾何公差と言います。

例えば前述のすきまばめ部品においても、径の精度は良くても反りや歪みがあると、はまらなかったり摺動がスムーズにいかないということが起こるためです。

下記は一例です。
Aの基準面に対して内径部分の並行度は0.05以内に、という意味になります。

幾何公差の図面表記

3.幾何公差の種類

幾何公差には多くの種類があり、その特性によってJISでは形状公差・姿勢公差・位置公差・振れ公差に分類されており、それぞれ取り決められた記号を持っています。

(引用、参考:日本産業規格 JIS B 0021 製品の幾何特性仕様(GPS)-幾何公差表示方式-形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式)

データムとは?

仮想の基準となる線や面などを言います。
通常、測定では対象となるワークを定盤に置いて測定することが多いと思いますが、その定盤も完全にフラットに作られているわけではありません。そのため、フラットに仮定した線や面を測定上で使用します。

4.公差と測定・検査

加工した部品が実際に公差内に入っているか確認するためには測定や検査が必要ですが、公差によって必要とされる測定器や検査方法が変わってきます。

一般公差の測定

一般公差は公差の中では最も緩いと言えます。
そのためメジャーやノギスといったミリ単位、コンマ1レベルの測定器なども多く使われます。

寸法公差の測定

一般公差よりも精度が厳しいことが多くなります。外径であればマイクロメータ、内径であれば3点式穴マイクロメータやシリンダーゲージとダイヤルゲージというふうに、0.001mm単位で測れるものが使われます。

はめ合い公差の測定

上記と同様の測定も出来ますが、栓ゲージやテーパーゲージなどのゲージ類や、マスターとなるワークを用意してはめ合い具合の検査を行うことも出来ます。

幾何公差の測定

定盤やダイヤルゲージなどの組み合わせで計測できるものもありますが、三次元測定機や真円度測定機などを使っての測定が多くなります。

5.最後に

公差のさじ加減は設計する人が決めるものですが、加工する人や使用する人、あるいは組み込まれる機械などさまざまな目線で考えられています。

厳しい公差や細かい公差を指示された部分があれば、それだけ重要であったり繊細な部品であると感じられます。そういった設計者の意図や思いを図面上で感じ取ってみると、さまざまなことがわかり面白いかもしれません。

↓幾何公差のひとつである、真円度や位置度についての記事はこちら。