産業用ロボットの種類を紹介!どんな現場で使われている?

皆さんはロボットと聞くと何を思い浮かべますか?人型のロボットやAIロボットなどをイメージする方が多いと思いますが、実は私たちの社会で最も活躍しているロボットは「産業用ロボット」と呼ばれるものであり、製造業をはじめとした幅広い産業で活用されています。

今回はそんな「産業用ロボット」について、それぞれの種類や特徴、また実際にどのような現場で活躍しているのかをご紹介します。

1.産業用ロボットとは

工場などで人が行う作業を代わりに行い、あらゆる製造現場の自動化のために使用される機械を産業用ロボットといいます。日本工業規格(JIS)による産業用ロボットの定義は以下になります。

「自動制御によるマニピュレーション機能や移動機能を持ち、各種作業をプログラムで実行できる、産業に使われる機械」

出典:日本工業規格(JIS B 0134:1998)

つまり、作成されたプログラムの手順に沿って人の手や腕のような動きを自動で行うことができる機械が、産業用ロボットに分類されます。

2.産業用ロボットの種類

自動車や電子・電気機械など、幅広い産業で使用されている産業用ロボットですが、以下のように複数の種類が存在します。

垂直多関節ロボット

人の腕のような構造をしており、複雑な動きができる産業用ロボットです。軸の数が多いほど幅広い動きが可能で、一般的には4軸〜6軸が多いですが、7軸以上あるロボットも作られています。組立、搬送、検査など様々な作業に使用され、製造現場で最も広く普及している産業用ロボットです。

  • 【特徴】
  • ・動きの自由度が高い
  • ・動きに対する剛性が比較的低い
  • ・軸数が多いものほど制御が難しい

水平多関節ロボット(スカラロボット)

水平な動きと上下の垂直な動きを組み合わせて、真上からの作業ができる産業用ロボットです。先端を含む水平方向に3つ、垂直方向に1つ、計4つの軸があるものが一般的で、主に組立などの作業に使用されることが多いです。「Selective Compliance Assembly Robot Arm」を略して「スカラ(SCARA)ロボット」とも呼ばれています。

  • 【特徴】
  • ・平面的な動きが得意
  • ・垂直な動きに対する剛性が高い
  • ・水平な動きに対する柔軟性がある

直角座標ロボット(ガントリーロボット)

※画像は中村留精密工業の直角座標ロボット「GR-210 High-Speed」と複合加工機「SC-300Ⅱ」

直交する2~3軸のスライド軸を組み合わせた、縦と横の直線の動きができる産業用ロボットです。直線にしか動かないため動作中のミスも起こりにくく、精度が高いのが利点です。主に部品の組立、運搬、検査などの作業を行います。

  • 【特徴】
  • ・価格が比較的安価
  • ・シンプルな作りで剛性が高く、操作が容易
  • ・他のロボットとの併用がしやすい
  • ・複雑な動きはできない

協働ロボット(コラボレーティブロボット)

※画像は中村留精密工業の、協働ロボットを利用した装置「Plug One」と複合加工機「SC-100」

人の代わりにではなく、「人と同じ空間」で働き人と協力して作業を行うことができる産業用ロボットです。作業への柔軟性が高く、様々な工程に対応できます。欧米では「コラボレーティブロボット(コボット)」とも呼ばれています。

  • 【特徴】
  • ・作業への柔軟性が高い
  • ・安全柵無しで現場に設置できる(※条件あり)
  • ・市販のものは専門知識が少なくても使いやすい

パラレルリンクロボット

並列に連結された複数のリンクで一点を動かす「パラレルメカニズム」を利用して、すべてのアームを並列に動かし、アームの先端の動きを制御して作業を行う産業用ロボットです。材料の選別・整列や、製品のピッキングなどに使用されます。

  • 【特徴】
  • ・剛性・精度が高い
  • ・一部の機械加工・プレス加工が可能
  • ・可動範囲は狭いが高速で動ける

3.産業用ロボットを導入するメリット

これまで人が行っていた作業を肩代わりしてくれる産業用ロボットを導入することで、以下のように様々なメリットがあります。

省人化

産業用ロボットにより自動化した工程では人を配置する必要がなくなり、人員を減らすことができるので省人化につながります。人手が不足している製造業において、省人化は産業用ロボットを導入する最大のメリットです。

生産性・効率アップ

人の代わりとなって働く産業用ロボットは、人には危険な作業も任せることができるため作業効率が向上します。また、作業現場に人がいない夜の間も24時間稼働し作業し続けることが可能なので、生産性の向上にも大きく貢献します。

安定した品質の維持

人の手で作業を行っていると、どうしても高い集中力を保ち続けることは難しく人為的なミスが起きる可能性を完全には防げません。しかし産業用ロボットを導入すればそのようなヒューマンエラーの心配はなくなり、安定した品質の製品づくりが可能になります。

コスト削減

産業用ロボットの設定や導入による初期コストは多く発生しますが、作業の生産性や効率がアップすることで、長期的に見るとトータルでのコストの削減につながります。

4.産業用ロボットが活躍している現場

幅広い産業で利用されている産業用ロボットですが、製造業では主に以下のような現場で活躍しています。

自動車工場

溶接やプレス、塗装、組立、検査などの工程がある自動車工場では、人にとって危険な作業や大変な作業が多いため、ほとんどの工程に産業用ロボットが活用されています。導入することで現場の安全性・生産性を大きく向上させることができます。

電子・電気機器工場

外部からの委託製造も多く、多種多様な製品の要望に応える必要がある電子機器の製造現場でも、あらゆるニーズに柔軟に対応できるように産業用ロボットが導入されています。組立などの作業で活用することができます。

化学・非金属工場

化学製品やプラスチック製品をつくる現場には、人の体に有害な物質が空気中に漂っている環境もあるため、そのような現場でも産業用ロボットは安全に作業を行うことができます。

半導体工場

世界的に需要の高い半導体の製造工場でも、工場での搬送作業などに産業用ロボットが導入でき、生産性の向上・コスト削減を図ることができます。

産業機械工場

作業への柔軟性が高い産業用ロボットは、産業機械の一つである工作機械と組み合わせて活用することでも生産性・効率をアップさせることができます。加工についての自動化だけでなく、そのほかの工程に対する自動化のニーズも高いため、積極的に開発が進められています。

5.中村留の産業用ロボット

中村留精密工業では自社の複合加工機の自動化のために、産業用ロボットやそれらを利用した自動化装置を開発しています。以下、主な製品をご紹介します。

ガントリーローダー

※画像は中村留精密工業の直角座標ロボット「GR-210 High-Speed」と複合加工機「SC-300Ⅱ」

ワークの搬送速度を大幅にアップすることができる直角座標ロボットです。搬送タイムを短縮し、非加工時間を削減します。

【製品の一覧はこちら

Flex Arm(フレックスアーム)

ワークの搬送から、爪交換までを自動化できる直角座標ロボットです。素材のローディング、完成品のアンローディング、ハンド交換、チャック爪交換を自動化し、機械の動きを止めることなく複数種類のワークを無人で自動運転できるようになります。

【製品の詳細はこちら

Plug One(プラグワン)

※画像は中村留精密工業の、協働ロボットを利用した装置「Plug One」と複合加工機「SC-100」

電気配線・エア配管類を一か所に集約した接続ユニットを搭載しているため、取り付け・取り外しがワンタッチで簡単にできるのが利点の、協働ロボットを利用した装置です。レイアウトを自由に変更できるので、複数の機械に柔軟に対応が可能です。

当社の複合加工機のラインナップや自動化製品については、以下からご確認いただけます。

【自動化製品についてはこちら

6.まとめ

これまで産業用ロボットは、自動車メーカーや家電メーカーなどの大手企業が大量生産のため活用するケースが多くありましたが、近年の製造業では人手不足の背景もあり、中小企業においても産業用ロボットによる多品種少量生産の自動化ニーズが高まりつつあります。

ただし、産業用ロボットはうまく活用することで大きな成果をもたらす一方、安全管理をおこたると重大な事故を引き起こすリスクもあります。事前に現場での検証や教育等をしっかりと行ってから、自社への導入を検討しましょう。