目次
1.始めに
友人や家族に仕事のことを話すときに何気なく口にした言葉が通じなかった、新しく入った人に教えているときにどういう意味か質問された、という経験はないでしょうか。
それらはいわゆる業界用語や専門用語と呼ばれるものかもしれません。工作機械・金属製造業・工場といった分野においてはどんなものがあるのか?なぜそういった言葉を使うのか?などをまとめてみました。
2.さまざまな業界用語・専門用語
工作機械関連
ワーク
直訳だと”仕事”ですが、機械・加工系においては加工物や部品のことを言います。
工順、工程
加工や組立などでは作業内容を工程、工程の順番を工順と呼びます。作業者は工順と工程が書かれた作業指示書などを見て、どんな順番でどんな作業を行うのかを確認しています。
段取り
例えば材料を運搬して機械に取り付けたり、刃物を取り替えたり、次の工程に必要な準備の全般を指します。段取り八分という言葉もあり、段取りが終われば作業の八割が終わったようなものという意味で、段取りの良さが仕事の効率や質を決めるとも言われます。
仕掛かり、仕掛品
工程の途中にある未完成のものや、次工程を待機している状態のものです。待機状態を無くして完成まで一気に仕上げることを仕掛かりレスとも言います。
割り出し
旋盤などの加工で角度や位置を決めることを言います。位置においては位置決めとも呼ばれます。
寄り付き
一般的には株や証券の取引で使われる言葉ですが、旋盤では距離感を表します。
特に刃物(タレット)と主軸とに対して使われることが多く、寄り付きが良い=より根本まで接近できる、隅々まで加工できる、というような意味になります。
振れ止め
加工物が振動したり動くのを防いだりサポートする器具を言います。特に長尺物や重量物で使われます。
心押し
物の中心を突くという意味で、旋盤においては加工物の両端の中心を突いて固定する作業を言います。センター押しとも言われます。
金属製造業・工場関係
増し締め、合いマーク
一度締めたボルトをもう一度締めることで、正しいトルクで締められているかを確認する為に行われます。増し締めが行われたボルトと締結した部品は合いマークと呼ばれる線が描かれ、その後に振動や経年などでゆるんでしまった場合にわかるようになっています。
けがき(罫書き)
手作業での加工を行う際に位置や中心線を決めるために、けがき針・トースカン・パスなどのけがき工具で微小なひっかき傷や印をつけることです。コンパスもけがき道具のひとつです。
ナメる(滑る)
ねじ頭の溝がつぶれてしまってねじが回らなくなってしまった状態を言います。いい言葉ではないですが「ねじが馬鹿になる」とも言われます。
ス(ひけ巣)
鋳物の材料不良のひとつで、気泡状やアリの巣のような孔が出来ているものです。強度や耐久性に劣ってしまうため使えません。
初物
新しく設計・加工された部品をいいます。寸法などで細かい修正がされたものでもそう呼ぶことがあります。
勘所
ものごとの肝心な部分という意味で、作業を行うときのコツやポイントのようなものです。文字だけの手順書では伝わりにくい技術的な勘所はしばしば見られます。
錆び手
金属にふれると錆びが起きやすい体質のことです。手のひらから発せられる汗の量や成分の違いには個人差があり、人によっては触れた箇所が翌日には真っ赤に錆びしまうこともあります。
切粉、ダライ粉
金属を研削加工した際に出るくずのことです。ダライはオランダ語で旋盤を意味するdraaibankから来ています。
バリ、カエリ
加工不良のひとつで、端やフチにささくれや突起のようなものが出きてしまう現象です。
詳しくはこちらの記事でも書かれています。
チョコ停、ドカ停
機械・ライン・システム・作業者などに何らかのトラブルや異常が起きて加工や生産の流れが停まる事で、数分から数十分の停止をチョコ停、長時間にわたるものや復旧の目途がたたないものをドカ停といいます。
テレコ
物が食い違っている時に言います。例えばAをBの置き場所に、BをAの置き場所に入ってしまっていることをテレコになっている、という使い方をします。
コンマ1、コンマ01、100分台、1000分台
小数点以下の桁や数字を表現する時に言います。また、製造関係ではmmを基準に使います。
コンマ1・・・0.1
コンマ01・・・0.01
100分台・・・小数点以下第2位
1000分台・・・小数点以下第3位
例えば、0.001mmを測れるダイヤルゲージのことを1000分台のダイヤルゲージと呼んだり、「ここの公差何だっけ?」「プラマイコンマ1だよ」といった使い方をします。
5S、2S
整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5つのSからはじまる言葉の標語で、職場環境を綺麗に保つことで作業を効率よく行ったりミスや怪我を防ぐことを目的としています。
この中でも整理・整頓だけを重点的に行うものが2Sです。
KY
危険予知の略語で、労働災害を防ぐための考え方や訓練を指して使われることが多いです。
専門用語×英語関係
テンション
日常会話では気分の高揚や緊張感の意味で使われることが多いですが、機械用語ではベルトやチェーンなどの張り具合を意味します。強く引っ張ってもちぎれない=ハイテン材という金属材料もあります。
インターロック
安全装置のひとつで、条件が満たされていないと作動しないシステムです。条件によく利用されるのがドアの開閉で、たとえばエレベーター・電子レンジ・洗濯機などはドアが閉まっていなければ動きません。
ユニット、ASSY(アッセー、アセンブリ)、モジュール
いずれも、いくつかの部品を組み合わせたひとかたまりや機構を言います。
タクトタイム、サイクルタイム、リードタイム
※見解のひとつであり、これが正解というものではありません。
タクトタイム・・・ひとつの製品や部品に割り当てる時間
サイクルタイム・・・ひとつの部品や工程が終わるまでにかかる時間
リードタイム・・・発注した製品や部品が納品されるまでにかかる時間
ジャストインタイム
必要なものを・必要な時に・必要な分だけ、という生産方式や管理体制です。
在庫は不足しても過剰すぎてもマイナスになることから生まれた考え方です。
QC
Quality Control=品質管理の略語ですが、QC活動を指して使われることが多いです。
作業方法や作業環境などを改善することで製品の品質を向上・維持しようというものです。
3.なぜ業界用語・専門用語は使われる?
これらの用語には一般的な意味とは違う使われ方をしているものや、聞き馴染みのない言葉なども多くあります。なぜわざわざ意味を変えて使ったり、わかりにくい言葉を選ぶのでしょう。
他にしっくりくる表現や適切な言葉が無い
→ユニットやASSYなどは日本語に言い換えるのが難しい表現と言えるでしょう。
長い言葉を略して言いやすくしている
→チョコ停やドカ停、QCなどは略さずに言うと長くなってしまうでしょう。
外部の人に伝わりにくくしている
→製造関係ではあまり使われませんが、トイレや休憩に入る事をお客さんに伝わらないように言葉を変えているシーンは多く見受けられます。
4.最後に
いかがでしたか?
一般的には耳慣れない言葉でも、その業界や仲間内ではコミュニケーションや伝達がスムーズになる言葉なのでしょう。なかには工作機械・製造関係だけど初めて聞いた、という言葉もあるかもしれません。また、中村留の中では特に思いつかなかったですが、その会社独自で作られた言葉というのもあるかと思います。
これらの言葉は正しく理解したり相互の認識の違いが無いかを確認することも、作業を正確に進める上で大事なことであると思います。