切削加工で使用される専門用語を解説!

1. はじめに

切削加工の分野では、業界でしか通用しない、意味が分からない用語が多くあります。そのため、加工に関する質疑応答などの会話中に用語の意味が分からず焦ってしまうことがあります。
今回はその中でも、若手エンジニアが特に疑問に思っていた切削工具の用語について簡単に解説します。

2.インサート(チップ)

チップが欠けている、インサートの材種が合っていない、などよく耳にする用語ですが、このインサートとは何のことでしょうか?

インサートとは刃先交換式の切削工具の刃先の部分のことをいい、スローアウェイチップや単にチップとも呼ばれています。
超硬、サーメット、セラミックス、CBN、ダイヤモンドなど様々な材質があり、形状、大きさも多くの種類があります。被削材や使用する刃具形状に合わせて最適なものを選定します。

提供:住友電気工業株式会社

3.ブレーカー

加工物に切削切粉が巻き付いて製品が不良になる、切削工具が破損した!
こんな場合は、違うブレーカーに替えてみることで改善されることがあります。

ブレーカーとは、インサートのすくい面上に突起や溝を設け、切削時の切りくずによる巻き付きやこすれなど切削切粉による不具合を解消させるための細工のことを意味しています。

ブレーカーにより切粉を分断させたり、カールさせたりすることができ、切込みと送りの調整でその効果を最大限に発揮できるように切削条件を調整します。

提供:住友電気工業株式会社

4.スローアウェイバイト

スローアウェイバイトとは、刃先を交換できる切削工具のことをいいます。反対に刃先が交換できないバイトはロウ付けバイトと呼ばれています。

刃先が摩耗した場合や欠けが発生した場合は、ロウ付けバイトは刃先の付け直しや再研摩を行う必要があります。
一方、スローアウェイバイトはインサートを交換するだけで新しい刃先にすることができ、その作業性から多くの生産現場で用いられています。

提供:住友電気工業株式会社 (左)ロウ付けバイト(右)スローアウェイバイト

5.ネガ・ポジ

切削工具の話ではたびたびネガやポジという言葉が使用されます。
正しくはネガティブ、ポジティブといい、インサート(チップ)の逃げ角に違いがあります。

ネガチップは逃げ角が0°になっており、スローアウェイバイトで逃げ角をつけているのですくい角はネガ(マイナス)になります。
ポジチップには7°や11°などの逃げ角がついていますので、バイト側で逃げ角をつけなくてもすくい角はポジ(プラス)になります。

ネガチップは両面使用できるものが多く流通していますが、ポジチップは逃げ角があるため片面しか使用できません。
ネガ、ポジ共に特徴があり、加工する状況によりどちらの工具が良いかを選定して使用します。

ネガティブチップ 提供:住友電気工業株式会社
ポジティブチップ 提供:住友電気工業株式会社

6.P種・M種・K種

インサートに使用される超硬合金は、日本工業規格JIS B4053で、切削用超硬質工具材料の分類として6種類に規定されています。

P種(青色):綱、鋳鋼
M種(黄色):ステンレス鋼(オーステナイト系/フェライト系)ステンレス鋳鋼
K種(赤色):鋳鉄、ねずみ鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄、可鍛鋳鉄
N種(緑色):非鉄金属、アルミニウム、その他の非鉄金属
S種(茶色):耐熱合金、チタン、ニッケル、コバルト基耐熱合金、チタン合金
H種(灰色):高硬度材料、高硬度綱、高硬度鋳鉄、チルド鋳鉄

被削材の材質によりどのインサートを使用すれば良いか分類がされていますので、インサートを選定する際は加工する材質を参考に選定します。インサートのケースにも分類が記されていますので、選定の際の参考になります。

提供:住友電気工業株式会社

7.まとめ

今回は、切削工具に関する用語について解説しました。切削加工の分野では、様々な専門用語が使用されています。
今回紹介させて頂いたものはほんの一部でありますが、よく使用されている用語になります。切削加工を行うエンジニアにとっては必ず必要な知識になります。