工作機械の生産性を左右する重要な要素の一つが「主軸」です。
主軸とは、単なるワークを保持するための機構ではありません。どのような加工を行えるのか、どのように工程を分担できるのか、生産性をどこまで高められるのかを左右するための、中心となる存在です。
特に近年は、人手不足や多品種少量生産への対応を背景に、工程集約を実現する「複合加工機」への注目が高まっています。その中でも「対向2主軸(2スピンドル)型複合加工機」は、加工工程の削減と生産性向上を両立できる設備として多くの製造現場で採用されています。
しかし、対向2主軸型複合加工機の価値は単に「主軸が2つあること」ではありません。重要なのは、
- ・左右主軸で加工を分担できること
- ・左右主軸で同時加工できること
- ・精度を維持した受け渡しができること
です。
本記事では、対向2主軸機の本当の価値と、それを実現するために求められる主軸性能について解説します。
目次
1. 主軸とは工作機械の性能を決める心臓部

工作機械における主軸とは、ワークを保持して回転させるための機構です。しかし実際には、単にワークをつかむだけの装置ではありません。
主軸の性能は、
- ・回転精度
- ・回転速度
- ・トルク
- ・剛性
- ・振動特性
といった要素によって決まり、加工品質や生産性に大きく影響します。
例えば主軸の剛性が不足していると、切削中にびびり振動が発生しやすくなり、加工面の品質低下や工具寿命の短縮につながります。また回転精度が低ければ、高精度部品に求められる真円度や同軸度を維持することが難しくなります。
つまり主軸は、単にワークを保持する装置ではなく、「加工精度」「加工能力」「生産性」を決める工作機械の心臓部といえる存在です。
さらに複合加工機では、主軸の役割はより重要になります。なぜなら主軸はワークを保持するだけでなく、加工工程そのものを受け持つ「加工ステーション」として機能するからです。
そのため、複数の工程を1台で完結させる複合加工機では、
- ・主軸がどの程度の加工能力を持つのか
- ・複数の主軸をどのように活用できるのか
が、生産性を大きく左右します。
では主軸が2つになると、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
2. 対向2主軸機の価値は「受け渡し」ではなく工程集約

対向2主軸機というと、「主軸から主軸へワークを受け渡し、裏面加工を行う機械」というイメージを持たれることが少なくありません。
確かに受け渡し機能は重要です。従来であれば以下のように、
STEP①:旋盤Aで表面加工
↓
STEP②:ワークを反転(トンボ)させて旋盤Bで背面加工

としていた工程を、
STEP①:表面加工
↓
STEP②:主軸間受け渡し
↓
STEP③:背面加工
↓
STEP④:完成

と1台で完結できます。
しかし、受け渡しそのものは目的ではありません。本質的な価値は、「工程を集約し、ワンチャッキングに近い形で完成品まで加工できること」にあります。
そのためには、左右主軸が単なる送り側・受け側ではなく、加工能力を持った「加工ステーション」として機能することが重要になります。
3. 真価を決めるのは左右主軸の加工能力

対向2主軸機の性能差が最も現れるのがこの要素です。主軸が2つあっても、
- ・左主軸しか本格加工できない
- ・右主軸は受け取り専用に近い
という構成では、工程配置の自由度は限られます。一方で左右主軸の加工能力が高ければ、
- ・旋削
- ・ミーリング
- ・穴あけ
- ・タッピング
などを工程に応じて最適に振り分けることができます。
中村留のWTシリーズやWYシリーズが高く評価されている理由の一つもここにあります。左右主軸を単なる受け渡し装置ではなく、「どちらも積極的に加工に参加する主軸」として活用できるため、工程設計の自由度が高くなります。
結果として、
- ・工程集約
- ・段取り削減
- ・リードタイム短縮
につながります。
4. 対向2主軸機最大のメリットは左右同時加工
対向2主軸機の生産性を考えるうえで最も重要なのが左右同時加工です。例えば、
- ・左主軸で次のワークのOP10
- ・右主軸で前のワークのOP20
を同時に進めることができます。
左主軸
OP10加工
+
右主軸
OP20加工
これによって加工時間を重ね合わせることができます。もし同時加工ができなければ、
OP10
↓
OP20
と順番に加工するしかありません。しかし同時加工が成立すると、実質的なサイクルタイムを大幅に短縮できます。
つまり、対向2主軸の価値は「受け渡し」ではなく「同時加工」にあると言っても過言ではありません。
5. 芯間は「ワークサイズ」ではなく「生産性」のスペック
工作機械の仕様を見る際、多くの人は芯間を「長いワークが加工できる能力」として見ています。
もちろんその意味もあります。しかし複合加工機では、より重要な意味があります。それは、「左右主軸で同時加工を成立させるための加工空間」です。
左右主軸がそれぞれワークを保持した状態で、
- ・タレット
- ・ミーリング工具
- ・B軸工具
が干渉せず動作するためには十分なスペースが必要です。つまり、
①芯間が長い
↓
②同時加工しやすい
↓
③サイクルタイム短縮につながる

という考え方になります。これは非常に重要な視点です。
設備選定時も、「どれだけ長いワークが加工できるか」だけでなく、「どれだけ効率的に同時加工できるか」という観点で見る必要があります。
6. 精度を維持した主軸間受け渡しも重要
生産性だけを追求しても、高精度な部品加工は実現できません。例えばシャフト部品などでは、OP10とOP20をまたいで加工される形状の同軸度が重要になります。
ここで問題になるのが受け渡し時の負荷です。受け渡し時に、
- ・過大な押し付け
- ・ワーク変形
- ・微小な芯ずれ
が発生すると、OP10とOP20で加工中心が一致しなくなる可能性があります。
つまり、受け渡せることと、精度を維持して受け渡せることは別問題なのです。
7. ソフトワークプッシャーが高精度な受け渡しを支える
中村留では、高精度な主軸間受け渡しをサポートする機能としてソフトワークプッシャーを搭載しています。
受け渡し時に発生するワークへの負荷を抑えることで、
- ・ワーク変形を抑制
- ・掴み替え時のストレスを軽減
- ・同軸精度の維持をサポート
します。
工程集約が進むほど、一度の受け渡し精度が最終製品の品質を左右します。だからこそ、「受け渡せる」ではなく、「精度を守りながら受け渡せる」ことが重要なのです。
まとめ|優れた対向2主軸機は「工程集約・同時加工・精度」を高いレベルで実現する
対向2主軸複合加工機の価値は、単に主軸が2つあることではありません。真に重要なのは、
- ・左右主軸が高い加工能力を持つこと
- ・左右主軸で工程を柔軟に分担できること
- ・左右主軸で同時加工できること
- ・十分な加工空間を確保できること
- ・精度を維持した受け渡しができること
です。
そして中村留のWTシリーズ、WYシリーズ、JXシリーズは、こうした対向2主軸機に求められる要素を高いレベルで兼ね備えています。
だからこそ中村留の対向2主軸複合加工機は、単なる工程集約設備ではなく、生産性向上と高精度加工を両立するためのプラットフォームとして、多くの製造現場で採用されています。
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