目次
1.周辺装置とは
工作機械の場合の周辺装置とは、機械と連結または周囲に設置し、一連の作業の流れをスムーズにしたり便利にするためのものです。
加工自体は1台で全て完結するような高性能な機械であっても、その前後の準備や処理には人の手が必要なことがまだまだ多く、面倒であったり時間のかかる作業もあると思います。それらを簡便にしたり自動化する装置を使えば、工数削減や無人化の手助けになります。
周辺装置には大型のものから小型のものまであり用途もさまざまですが、ここではNC旋盤・複合加工機での周辺装置の一例を紹介しています。(※名称はメーカーによって異なる可能性があります。)
2.ワークの供給・排出を補助する装置
ローダー・アンローダー
ローダーは加工する前のワークの供給を、アンローダーは加工し終わったワークの排出を行う装置です。
ローダーの中でもガントリーローダー(ガントリー=門型)というタイプは機械に覆いかぶさるような形状で連結しています。装置が機械の上に位置する分、機械周りでの作業が行いやすいというメリットがあります。
また、シャフトなど棒状の材料に特化したローダー・アンローダーはシャフトローダーやバーフィーダーといった名称で呼ばれます。この場合はローダー・アンローダーと主軸のチャックがダイレクトに供給・排出できるよう、チャックの中心が空洞になったものが使われます。
シャフトローダーの利用例です。ローダーは機械の左側に、アンローダーは右側に設置することが多いです。
パーツキャッチャー
ワークの取り付け・取り外しを行うもので、押し出したりハンドで掴むなどして、専用のバケットやパレットなどに移動させる装置です。
ワークを押し出してバケットに落下させるタイプです。ワークに傷がつかないよう、バケットは樹脂で作られています。
ワークをハンドで掴み、所定の位置に移動させるタイプです。ハンドも樹脂で作られています。
ワークストッカー
バケットやパレットに移動されたワークを平置きしたり段積みしたりする装置です。パレットを多段に積むタイプはパレタイジングと呼ばれます。
アームロボット
多関節を持ったアームでワークをつかみ、供給と排出のどちらも1台でこなす産業ロボットです。
このようなアームロボットはむき出しで稼働するため、周囲の作業者に危険が及ばないように安全柵を設置をするなど安全面の対策が必要です。しかし産業ロボットの中でも協働ロボットとして認定を受け、十分な安全装置の設置を行うなどして安全性が確保された場合、安全柵を必要最低限にすることが出来ます。
アームロボットとワークストッカーが稼働している様子です。
産業ロボット・協働ロボットとは
産業ロボットは人に代わって作業するロボットであり、隔離された空間で単純作業を繰り返すことがほとんどです。協働ロボットは人と同じ空間で人と協力しながら作業することを前提としたロボットであり、フレキシブルな作業を行うことが出来ますが、安全性を確立した構造やシステムが求められます。
3.切削油をクリーンにする装置
ミストコレクター
オイルミストを除去する装置で、フィルターでろ過するものや遠心分離式などがあります。
切削油を使用して切削加工を行う場合、高圧で吹き付けるので飛散したり、切削上に起こる熱で気化することで油が霧状になります。これをオイルミストといい、そのまま機外に排出されると空気中を漂って人体に害を及ぼし、床や天井など設備の汚れ、空調・電気系統の故障の原因にもなると言われています。
NC旋盤・複合加工機のようにクローズドで加工するものは機械に専用の穴が設けられており、直接取り付けることができます。汎用旋盤のようにオープンに加工するものは広いフード状で吸引するタイプが用いられます。
オイルスキマー
スキマーは”浮いているものをすくい取る装置”という意味を持ち、オイルタンクに浮いた汚れ・油を除去する装置です。ベルト式・スクリュー式・フロート式などがあります。
切削油は1度きりの使い捨てではなく何度か繰り返し利用することが多いですが、加工を行うたびにワークに付着していた汚れや作動油・潤滑油などの油が混じってしまいます。これらが蓄積していくと切削油が変質して悪臭の原因になったり、パフォーマンスを十分に発揮できず加工に影響を及ぼすことがあります。
スラッジ回収装置
タンクに沈んでいる細かい切粉やヘドロ状の汚れなどをスラッジといい、これらを回収する装置です。フィルタでろ過するタイプや磁力で吸着するタイプなどがあり、オイルスキマーを併せ持ったものもあります。
スラッジが堆積していくと切削油が汚れるスピードが早くなる、ワークに細かい傷をつける、ノズルやフィルタに目詰まりなどが起こるといった弊害が起こります。
クーラントチラー
切削油(≒クーラント)の温度を管理するための装置です。
切削油は加工時の摩擦を軽減して高温になるのを防ぐ役割を持つので、温かいよりはある程度は冷たい方が効果的です。また、油温のバラつきによる加工精度のバラつきも防ぎます。
4.その他
切粉圧縮機
チップコンベアから排出された切粉を圧縮してコンパクトにする装置で、粉砕機能がセットになったものが多いです。運搬の回数や手間が減り、置き場の省スペースにもなります。
エアーコンプレッサー
圧縮された空気を吹き付けて、ワークに絡んだ切粉・ほこり・水滴を吹き飛ばすための装置です。
高圧洗浄機
高圧の水を吹き付けて、機内やワークなどの洗浄を行うための装置です。
5.最後に
周辺装置は直接的に加工を行うわけではありませんが、上記で挙げたように工数削減・無人化・自動化の手助けを行うものや加工を円滑に行えるように保つものなど様々なものがあり、中にはもはや無くてはならない必須とも言えるものもあります。
しかしこれらをすべて揃える必要はなく、目的や状況に応じたものを選択するとより良い効率性や作業環境が得られるでしょう。