1.規格とは
ものづくりでは自由に作っても良い部分と、ルールに沿って作るべき部分があります。
例えばテレビや冷蔵庫といった電化製品はメーカーによってさまざまなデザインや機能を持ったものがありますが、プラグの形状はいくつか種類があるものの、ある程度は統一して作られています。コンセントの方も、種類が違っていることはあってもサイズ的に刺さらなかったという経験はまず無いかと思います。
これらの部分はルールに沿って作られているからであり、ルールは形状だけでなく品質や安全性などさまざまな面で取り決められています。特に産業・技術・工業製品などに関するルールのことを規格といい、ISO規格やJISがこれにあたります。
規格の分類
規格には、どんな組織がどんな層に対して取り決めたかで国際規格・国家規格・団体規格・社内規格などの分類があります。(この他に地域規格、地方規格などもあります。)
規格は法規ではないので、強制力はなく任意です。ただし法規の中で規格が引用されている場合にはその規格にも強制力が発生し、違反すれば罰則が課せられるものもあります。例えばガス・石油類・薬剤といった人体や環境に影響を及ぼすもの、事故や火災などの危険性が大きいものなどが挙げられます。
2.ISO
ISO(国際標準化機構)は世界各国が互いのあらゆる物やサービスをスムーズに利用・取引できるよう標準化の推進と国際規格の取り決めを行っており、技術の発展や共有、経済活動の促進なども目的としている非政府組織です。これまで22,000以上もの規格が取り決められており、162ヶ国が参加しています。
(※2018年時点 引用:日本産業標準調査会 https://www.jisc.go.jp/international/iso-guide.html)
ISOが取り決めた規格には基本規格、製品規格、方法規格のモノ規格と呼ばれるものと、マネジメントシステムに関する規格に分類されます。
モノ規格
・基本規格
→用語、記号、単位、など基礎的な事柄を取り決めたもの。
・製品規格
→製品の仕様、構造、品質、安全性などを取り決めたもの。
・方法規格
→分析、検査、測定、作業などの方法を取り決めたもの。
マネジメントシステム規格
品質・安全を提供するための仕組みや、環境への配慮や保全などの管理体制を取り決めたもの。
ISO 9001(品質管理システム)、ISO 14001(環境マネジメントシステム)などが世界中で多く利用されています。これらのマネジメントシステムを利用して社会に公表する場合(例えば看板やホームページに”ISO 9001取得”と記載するなど)、認証機関の審査を受け、クリアしたのちに認証をもらう必要があります。
セクター規格
例えばISO 9001は最も多く利用されているマネジメントシステムですが、どんな業界に対しても利用できるように汎用的な内容になっており、それぞれの業界に深く言及した内容にはなっていません。
そのため、ISO 9001をベースにそれぞれの業界に特化した形で作られたものがセクター規格です。自動車業界、航空宇宙業界、医療機器業界などで取り決められています。
3.IEC
IEC(国際電気標準会議)は、ISOで除外されている電気・電子に関する技術や製品の標準化や国際規格の取り決め、品質や安全性の評価制度の提供などを行っています。
あらゆる規格の中でも電気・電子は特に重要視されていち早く推し進められていたので独立している形になっていますが、両機関は同じ建物内にあり、どちらの領域にも関することであれば共同で取り決められた規格もあります。(例 ISO/IEC 7810:カードのサイズ)
IEC規格の数字は60000から始まり、ISO規格の数字と重複しないようになっています。
4.ITU
電気の中でも無線や有線などの電気通信はITU(国際電気通信連合)の管轄になります。ITUはITU-R(無線通信部門)、ITU-T(電気通信標準化部門)、 ITU-D(電気通信開発部門)の3つの部門で構成されています。
現在では5GやBluetoothなど実に多様な対象が挙げられますが、もともとはモールス信号や電話から始まり、国をまたぐと障害や遅延が起こることから標準化の取り決めが進んだと言われています。
規格の標準化と取り決めをおこなっているのはITU-T部門で、ISOやITCとは表記が異なります。規格が承認されるとITU-T勧告として公表され、A~Zのうち25字を使ったカテゴリのシリーズ表記となっています。例えばGシリーズは伝送システムやデジタルシステムに関する内容、Oシリーズは測定機器の仕様を取り決めた内容です。(例:G.860シリーズ、O.220シリーズなど)
5.JIS
JIS(日本産業規格)はJISC(日本産業標準調査会)が日本国内用にISO・IEC・ITU規格を訳し、産業標準化法にもとづいて取り決められた国家規格です。
ISO 9001=JIS Q 9001 のように、JIS規格の番号はISO・IECからそのまま受け継いで作られています。”Q” の部分はカテゴリを表し、アルファベットA~Zのうち19文字にカテゴライズされており、Qは標準物質や管理システムなどに関する取り決めです。工作機械、工具、治具などはBに取り決められています。
基本的にはJISはISO・IEC・ITU規格に整合化されたものや準じて作られたものが多いですが、中にはこれらの規格と一致しないものもあります。もともとあった日本独自の規格が深く根付いていたり、変更に伴う労力や経費などの面で困難であるなどの理由が挙げられます。例えば紙のサイズもそうで、A版はISO規格・JISは統一されていますがB版は異なり、日本とアジアの一部でしか使われていない独自のサイズです。
日本から世界へと伝わった規格もあり、非常口のマークやトイレの男女マークなどを始めとする数々のピクトグラムもそのひとつで、東京オリンピック(1964年)や大阪万博(1970年)を契機に作られ、世界に広まったとされています。
産業標準化法
産業標準化法はJIS法とも呼ばれ、適正で合理的な産業の標準化および国際標準化への促進を取り決めたものです。2019年に工業標準化法から改正と改名が行われ、同時にJISも工業標準規格から産業標準規格へと変わりました。
それまでは鉱工業品のみが対象でしたが、IT化や情報技術の革新に伴い、データやサービスも対象とすることが決められました。また、JISマーク取得手順の迅速化、信頼性の向上、取り締まりの強化なども行われました。
6.まとめ
☝規格は便利で安心に使うためのさまざまなルールやシステム
☝規格は世界規模、国内規模、業界規模、会社規模などそれぞれのターゲット層がある
☝ISOは電気関係以外、IECは電気、ITUは電気通信の世界標準
☝JISは日本国内の標準
規格の多くは強制力のない任意のルールですが、作られた経緯には不便さや非合理的なことをなくそう、安全で良いものを作ろうという先人たちの思いから始まっています。また、作って終わりではなく定期的に見直しや修正も行われています。
規格を理解し、適切に利用して受け継いでいくことはものづくりをする上で大切なことです。