テールストックを徹底解説!どんな種類がある?

1.テールストックとは

テールストックは心押し台とも呼ばれ、旋盤や研削加工において長尺のワークを加工する際、主軸と対になってセンター押しによる保持やサポートを行うものです。

手動式・自動式・自走式などの種類があり、テールストックに組み込まれるセンターも加工物の形状に応じてさまざまなものがあります。下図は、汎用旋盤でよく見られるタイプのテールストックです。

汎用旋盤でよく見られるタイプのテールストック

手動式

移動およびクランプ・アンクランプのどちらも手動で行うタイプです。
テールストックはボルトでベッドに取り付けられており、移動する際はスパナで緩めて使います。

手動式テールストックの仕組み

この図ではクランプ・アンクランプはねじ式ですが、ハンドル式、レバー式などもあります。

自動式

テールストックをインデックスユニットと連結させ、タレットのZ軸の移動と連動させるタイプです。
タレットはNCプログラムによって移動と位置決めを行います。

自動式テールストック

自走式

油圧・空圧シリンダーによるものや、NC制御されたボールねじによるものなどがあります。

前者はドグ(センサーを感知させるためのもの)を調整して移動する位置を決め、シリンダー内のピストンと油圧や空圧の力によって移動を行うものです。後者はNCプログラムによって移動位置を決め、ボールねじと連動したモーターによって移動を行います。

2.推力について

テールストックがワークを推す力のように、物体を進行方向へ推し進める力を推力と言います。

推力が強すぎるとワークが曲がるなど形状に影響を及ぼし、弱すぎても芯ずれなどが起こり加工精度が出ないため、適切な力で心押しする必要があります。推力は動力源のパワーや速度などによって決まり、空圧と油圧では油圧の方が大きな推力を生み出すことが出来ます。

航空機の推力
航空機がプロペラとエンジンで進む力も推力です。

3.センターの種類

センターは芯押しを行う、先端が円錐となった棒状の部品です。円錐の角度は通常60°とされており、シャンク(棒状の部分)はテーパー形状になっています。

テールストックに組み込まれるセンターの種類

レースセンター

固定センター・デッドセンターともいい、先端とシャンクが一体構造になっているものです。精度に優れますが、ワークとの摩擦が起きるため高速回転には向かないとされています。

回転センター

ライブセンターともいい、軸受けが内蔵されていて先端部分が回転するようになっているものです。高速回転に向きますが、精度はレースセンターよりは劣るとされています。

傘型回転センター

パイプのような筒状の部品に対して使われる回転センターです。

ドライビングセンター

チャックのような爪がついており、両センター持ちで加工する際に使われるものです。

ビルトインセンター

テールストック内部に軸受けと回転構造を持ったものです。軸受け径が大きく、剛性が高いとされています。

4.テールストックと主軸の違い

NC旋盤や複合加工機ではテールストックの他に、第二主軸と呼ばれるものを選択することが出来ます。

主軸の対となって保持やサポートを行うのは第二主軸も同じですが、移動軸がテールストックよりも多軸になり、第一主軸からワークの受け渡しを行い、チャックで掴んでいた部分の加工(背面加工)も続けて行うことが可能になります。そのため長尺ワークでなくとも活用されます。

主軸とテールストックは構造的な違いがあり、剛性や推力はテールストックが優れます。長尺の重量物の加工を多く行いたい場合はテールストックを選択すると、安定した加工を行うことが出来るでしょう。

5.タレットテールストック

タレットを複数持ったNC旋盤・複合加工機では、タレットのツールホルダーにテールストックを取り付けて心押しを行うことも出来ます。下図はタレットテールストックを利用した加工の一例です。

実際に加工している様子の動画です。

タレットテールストックの大きなメリットは第二主軸を活用しながら長尺物の加工を安定して行うことが出来ることです。第二主軸があれば背面加工も1台でまとめて行い、完成品に仕上げることが出来ます。

6.最後に

テールストック自体は切削加工を行うものではありませんが、長尺ワークの切削の安定や精度の向上には欠かせない重要なサポート役です。構造や種類を理解することは切削加工において大切なことであり、精度が出ない・ワークが曲がるといった困りごとが起きた時、見直すポイントになるかもしれません。